痛快! 病ンデレラの逆襲
その話を聞いたのは、小学校に上がる年だった。
それも偶然、世間話のように。
「お千代さん、お嫁さんだ!」
教会前で見掛けたウエディングドレス姿の美しい花嫁。
皆に祝福されライスシャワーを浴びる花嫁が、物語の挿絵で見た舞踏会のシンデレラのようで、私はその女性に目が釘付けになった。
「お千代さん、お姫様みたいだね。姫乃もお姫様になれる?」
「はい、きっと。姫様のウエディングドレス姿を千代は楽しみにしております」
それに、とお千代さんは微笑んだ。
「姫様には、すでに素敵な王子様がいらっしゃいます。その方が姫様の旦那様になる日が待ち遠しゅうございます」
「王子様? 姫乃の旦那様?」
「さようでございます。許婚とか婚約者と云われるお方です。お二人とも、まだお小さいので今しばらくお待ちください。姫様が十六歳になられたらお迎えにいらっしゃると思います」
それは十年後だった。
だが、その時を待たず我が家は落ちぶれ、許婚の話など今の今まで忘れていた。