痛快! 病ンデレラの逆襲

社長がくぐったシャッターは、『MEMORY(メモリー)』という名の宝石店だった。

店主の扇喜三郎氏は、ケンタッキー前に立っているカーネルサンダース氏にちょっと似ていて、とてもダンディーな老紳士だった。

「ここはな、あの榊原やKOGOの次期後継者ウィリアム・佑都・ミラー、またの名を白鳥佑都というのだが、そいつらご用達の店だ。奴らもここで婚約指輪を作った」

憐みの目で社長を見る。
嗚呼……社長。サラブレッドに対する痛々しいほどのコンプレックスが見え隠れしています。

「扇さん、お久し振りです。約束の品、頂きに参りました」
「首を長くしてお待ちしておりました」

丁寧な挨拶の後、扇氏は口元をほころばす。

「お綺麗な方ですね。待ち望んだ甲斐がありました。想像以上のお美しさです」

私のことを言っているの? 眼科に行かれた方がよろしいのでは……。
だが、本人の思いを他所に、扇氏の言葉に社長は微笑みながら頷く。

「早速だが、見せてもらおうか」

一旦、奥に引っ込んだ扇氏がジュエリーケースを手に戻って来た。

ビロード地の赤い台座に、指輪が三つ乗っている。
一つは立派なダイヤが一粒嵌め込まれたシンプルなプラチナリング。
あとの二つは緻密な細工の施された細いゴールドリング。

「お約束通り、お持ちになった指輪のダイヤを使用させて頂きました。ゴールドの指輪はリフォームし、重ね付けできるようにいたしました」

社長は扇氏の言葉に従い、私の左手薬指に、まずゴールの指輪を一つ嵌め、続けて、ダイヤの指輪、そして、またゴールド指輪、と嵌めた。

エッ、どうしてピッタリなの?

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