痛快! 病ンデレラの逆襲

マジマジと指輪を見ていると、社長が心配そうに訊ねる。

「どうだ、気に入ったか?」

気に入ったも何も、婚約者のフリをするだけでしょう?

「社長、こんなにまでしなくても、っていうか、この計画はいつ立てたのですか?」

そうだ、これは急に思い付いて出来上がる代物ではない。

「……ズット……前?」

何故言い淀む! 何故クエッションマークを付ける!
腑に落ちぬ思いを抱いていると、扇氏がフッと意味深に笑う。

「こちらの品は、世間を大騒ぎさせた榊原氏が婚約者様に贈られたものと同じく奏カナがデザインしたものです」

ウソッ! 急に左手が重くなる。

「だが、彼女がデザインを引き受けるとは……こちらの方が驚きでした。どんな手を使われたのやら」

扇氏が悪戯っぽい眼で社長を見る。社長は涼しい顔で私を見る。

「まあな、いろいろとな」

よく聞けば、奏カナは既に引退した著名なジュエリーデザイナーだという。
扇氏の話では、奏カナが、恩ある榊原氏のため婚約指輪のデザインを引き受けたのには頷けるが、社長の依頼を受けたのは青天の霹靂だったという。

「社長、まさかと思いますが、あくどく脅迫なんてことしていませんよね。それ、犯罪ですから」

「バカか! 俺の何処が犯罪者に見える。こんな善良な市民を捕まえて」

疑いの眼で社長を眺めていると、扇氏が声を上げ笑い出した。

「全く、可愛い人ですね、姫宮さんは」
「だろ!」

社長が軽くウインクする。

「どうぞ、指輪と共に末永くお幸せに」

扇氏の言葉に社長は躊躇いも見せず微笑みを浮かべると、「当たり前だ」と宣った。

話の展開がどうも読めない。何度も言うが婚約はフリでは?

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