痛快! 病ンデレラの逆襲
「冷めないうちに飲んでくれたまえ。それと、姫宮君だったね。すまなかった」
総帥が深々と頭を下げる。
「突然抱き付かれてびっくりしただろう」
イヤ、貴方の行為の方が驚きです! とビックリ眼で総帥を見る。
「……あの、そのだな……」
「もしかですが……彩萌さんは女性がお好きなのでは?」
言い難そうにモゴモゴしている総帥の代わりに、社長がズバリ言葉を発する。
総帥は大きな溜息を付き、小さく頷く。
「彩萌は今、十九歳なのだが、全く異性に興味がなく、先程のように同性にばかり目を向ける。で、最近になって本人に訊ねたら、『女性が好き』と悪びれもせず言い切りおった」
何ですとぉ、ユニフォーム・フェチではなく、女性ですとぉ!
ここはお化け屋敷なのか! 次々と人を驚かす。
「若いし、女学校の寄宿舎生活が長いせいで男に免疫がないだけ、と思っておった……」
「なるほど、だから私と見合いをさせ、男性に目を向けさそうとしたわけですね」
社長は納得したように総帥を見る。
「ああ、君みたいな内外共に男前との見合いなら、あいつも少しは男性に興味が沸くと思ってな。それに、君が曾孫の婿になってくれたら我が社の将来も安泰だ」
外は合っていると思いますが、内は最低最悪ですよ、と揚げ足を取りそうになり、慌ててコーヒーを一口飲む。
あらっ、美味しい! あの秘書、相当できるわね!
何気に上から目線だが、バリスタの資格を持つ私はコーヒーにはちょっと煩い。
今度はゆっくり香りを嗅ぎ、もう一口、口に運ぶ。
「しかし、まさか君が婚約者を連れて現れるとは……。おまけに彩萌が君より彼女に興味を持つとは……」
恨みがましく社長をジト目で見る総帥。
「それを言うなら総帥です。不意打ちで見合いをさせようとしたそちらが悪いと思いますが」
フンと鼻を鳴らし言い切る社長。
どっちもどっちだ。
本当に子供の喧嘩だ、と私はコーヒーをすする。