痛快! 病ンデレラの逆襲
「しかし……彩萌ではないが、婚約者殿がこんなに綺麗で素敵な女性とは……」
私の方に視線を向け、盛大に息を吐く。
この言葉には社長も気を良くしたようだ。
「当たり前でしょう、私が選んだ女性なのですから」
但し偽の! ですが、とまた茶々を入れそうになり、またコーヒーを飲む。
「君のことは諦めるとする。分かっていると思うが、あれのことは秘密厳守で頼む。その代わり、今まで以上に君の会社には便宜を図ろう」
どうやら今回の勝負、社長の勝ちのようだ。
本当にやり手だな、と感心するやら呆れるやらだ。
その後の社長の何と機嫌のいいこと。
帰りの車の中ではグハハハハと大笑いを繰り返し、気がふれたのかと思った。
「まさかの大どんでん返しだったな!」
ハンドルを握る手がプルプル震えている。
「社長! 危ないですから運転に集中して下さい!」
「嗚呼、分かっている。しかし、あのお嬢様がねぇ。今回もまた姫に助けられた。お前は俺にとってのミューズだな」
姫って、もう芝居は終わっている筈では?
「指輪まで作らなくてもよかったかもしれませんね」
最初からお嬢様にその気がなかったのだから……。