痛快! 病ンデレラの逆襲
「お訊ねしますが、その奏カナという方はお幾つなのでしょう?」
「そうねぇ、確か七十二、三? それぐらいじゃなかったかしら」
要子が答える。
社長が三十一……ならあり得るかぁ、と思いつつ、アッと思い出す。
「それは有り得ません。社長の母上は既にお亡くなりになっています」
そうだ、そうだった。いつだったか聞いたことがある。
それに社長室に飾られていた家族写真の母上は社長と瓜二つだった。
「なぁ~んだ、つまんない。世紀のスキャンダルかと思ったのに」
梨子が舌打ちする。どうやら、これを小説のネタにしようと思ったらしい。
「それにしても、やっぱり奏カナね」
要子が私の手を取り指輪に触れる。
「本当に素敵」
「感性が研ぎ澄まされていて、代々受け継がれても通じるデザインだわ」
要子と夢子がウットリ見入る。
「そう言えば、ミズ・ミミも彼女の影響を深く受けた一人よね」
あっ、まただ。夢子の顔が強張る。
「ところで、いつの間に婚約者になっちゃったの」
「そうよ! ついこの前のが、初デートだったんじゃない」
あれはデートではないのだが……。
要子と梨子がニヤニヤと笑い、早く説明して! と眼で訴える。
「そうなんですよね。本当にどうなっているんだか。何だかややっこしいことになっちゃっています」
私の方こそ、この状況を説明してもらいたいものだ。
「何、その迷路みたいな状況」
梨子の言葉は言い得て妙だ。
超高級牛につられて安請け合いした罰だな、と深く反省するが、何となく本当のことは言えなかった。