痛快! 病ンデレラの逆襲

「ところで、何故、貴女はミズ・ミミの名が出るたびに顔を歪めるのかなぁ?」

エッ! 梨子さん、貴女も気付いていたの? あれ、要子さんも?

「……」

夢子は二人の視線を無視して立ち上がると「お茶を淹れてくる」と言ってキッチンに向かう。

「ミズ・ミミって、実は男っていう噂があるんだけど……」

ヒソヒソと要子が囁く。

「ウソッ! じゃあ、もしかして、前付き合っていたっていう……」

要子と梨子がキッチンの方を見る。

「許されざる愛……故の別れとか?」

話は見えないが、気のせい? 梨子さんの瞳が異常に輝いているのですが……。

「でも、もしそれが本当なら、ミズ・ミミって夢子の……」
「そうよ、恋人だったの」

夢子の突然の声に、二人がギクリと身をすくませ、襖の方を見る。

トレーを持った夢子が動じた様子もなく立っていた。
そして「お待たせ」と言って、バラの香りが漂うハーブティーをコタツの上に置いていく。

ソーサーの上には手作りクッキーが二つ。
相変わらず女子力半端ない。

「それはマロンクッキー。この前、栗拾いしてきたの」
「キャッ、嬉しい」

途端に梨子は満面の笑みになり、早速口に入れる。

「ウーン、ファンタスティック!」
「ミミとは三年前まで付き合っていたわ」
「ラム酒とブランデーが入っているのかしら、大人の味ね」

突然の激白なのに何故かほのぼのとした雰囲気の中、ローズティーをすする音とクッキーを頬張る音が異常に大きく聞こえるのは私だけだろうか。

< 85 / 165 >

この作品をシェア

pagetop