痛快! 病ンデレラの逆襲

深まる秋を肌で感じるも、後二日で暦の上では冬というのに約束は果たされず、お千代さんもまだ帰って来ない。

代わりに、本人の意思を無視して、私の周辺はいつになく騒がしくなっていた。

「お姉様、十二月二十三日、二十歳のバースデーパーティー&クリスマスパーティーの件、よろしくお願いします」

社長室に呼ばれると、鳳凰のお嬢様、彩萌嬢が来訪していた。

鳳凰の三井秘書が言っていたパーティってこのこと?
いつの間に私が担当になったのだろう。

「これから打ち合わせのたびにお姉様に会えるなんて、キャッ、彩萌、幸せ」

ピンクのハートマークを飛ばし、お嬢様がベッタリ私の腕にしがみつく。
これからほぼひと月近くこの状態が続くの……?
私はゲンナリだ。

社長、何とかして下さい、と彼を見るが、そのたびに彩萌はガルルルルと社長を威嚇し、近寄らせない。

「彩萌様、次のスケジュールが迫っております。この辺りでお暇を」

助け舟を出したのは鳳凰で出会った女性秘書、三宅秘書だ。
どうやら、お嬢様のお守り役を命じられたらしい。

「三宅の意地悪。お姉様、お別れしたくない! そうだ、お姉様もご一緒しましょう。これからパーティー用のドレスを作りに行くの」

だが、間髪入れず社長が断る。

「鳳凰彩萌様、申し訳ございません。姫宮はこの後仕事が入っております」

「フン、こちらには指名制度っていうのがあった筈、お姉様をヘッドハンティングするわ」

「彩萌様、その権限はお嬢様にはございません。総帥に叱られますよ」

三宅がメッと彩萌を睨む。
どうやら、彩萌お嬢様も三宅秘書には敵わないようだ。
渋々引き下がり、三宅秘書に引っ張られQグループ本社ビルを後にした。

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