痛快! 病ンデレラの逆襲

つっ疲れたぁ! 
社長室のソファーにグッタリ身を預けていると、社長が横に座る。

「お疲れ様。彼女、まるで台風の目だったな」

他人事のように言う社長をジロリと睨む。

「誰のせいでこんな状態になったと思っているんですか!」
「俺のせい?」

だから疑問符を付けるでない!

「当然です! この状態が一か月近く続くって考えただけで頭が痛くなります」

グリグリと米神を押える。

「あっ、それは大丈夫。来週から二週間、お嬢様は寄宿舎のあるイギリスに戻らなきゃいけないらしい。だから、正味一週間ほどだ」

そっかぁ、とちょっとホッとするが、それでも長い! 精神が持つだろうか?

「姫」と隣に座る社長が優しく呼び掛け、私の頭を自分の肩の方に倒し、ポンポンと叩く。

本当にお父さんみたいだ。気持ちが落ち着いていく。

「睡眠不足か? 目の下にクマができている」

そう言えば、このところいろいろあり過ぎて……。
ファ~と欠伸をすると、途端に睡魔が襲ってくる。

「社長……ちょっとだけ……仮眠させてもらいます」

意識がどんどん薄れていく。

「……スキダ……アイシテイル……」

遠くで誰かが愛を囁く。
そう云えば、このところいろんな人たちの恋バナを聞いたなぁ。

好きな人……愛する人……。
私は愛していた……?
父も母も……そして、お千代さんも……。

愛していた筈だ、確かに皆を……。
なのに涙は出ない……とても悲しいのに……。

「……ダイジョウブ……ヒトリジャナイ……」

誰? 私の冷たく凍える心を温めてくれるのは……。

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