痛快! 病ンデレラの逆襲
おお! これは何? フランス映画を思わすような美しい光景。
美女同士の抱擁だけど……眩しい!
「ねぇ、もしかしたら、もしかするかもだけど、あの人ミズ・ミミ?」
「そうかも」
要子と梨子が二人を見つめ、ヒソヒソ話をする。
あの人が夢子さんの元恋人? ということは、男性! ということは男性同士!
でも、何だ、あの美しき生き物たちは!
二人の周りにキラキラのオーラが見えるのだが……。
「あの光景は二次元も三次元も超えた宇宙的美しさよね」
「ええ、これなら大人小説もいけそう」
何の話だ、と梨子を見る。
「ああ、今、打診されているのよ。恋愛ものを書かないかって……彼から」
彼とは……KTG出版の入口さんのことだろう。
だから、このところ恋バナに目の色を変えていたのか、納得。
「離して! 貴方とはもう何の関係もないんだから」
夢子がグッと美形の胸を押す。
「何を言っているの。ズット探していたのよ。まさか、ミーヤ・猫田先生のところにいたなんて。灯台下暗しだったわ」
だが、美形は全く動じる様子がない。更に夢子を力強く抱き締める。
それが夢子の逆鱗に触れる。
「もう、ヤダ、離して! バカバカ」
「あのぉ、ここではなんですので、中に入りません?」
梨子が辺りを見回し二人をとりなす。
ミミは「あら、そうね」と腕を解き、夢子は渋々、自分の部屋に向かう。
ちょっとちょっと! 夢子さん、どうして私の手を握り連れて入るのですか?
「ちゃんと聞かせて頂きましょう!」
おまけに保護者面の要子と梨子まで後に続く。