痛快! 病ンデレラの逆襲

「私は母の仕事が好きで、ズット修行に出ていましたが、三年前、母から後継者として戻って来なさいと言われ……」

「なるほど、で、夢子を捨て、親元に帰ったって訳ね。貴方、夢子のことを愛していたんじゃないの?」

要子の言葉に、千草ことミミはハァ? と夢子を見る。

「捨てた? 別れた覚えはありませんよ」
「エッ、だって、出て行った切り戻ってこなかったじゃない!」

要子がバンとコタツを叩く。

「それは……あの頃、母の体調が思わしくなくて……母は著名人だからそのことは極秘で……。ようやく連絡が取れるようになった頃は、もう夢ちゃんと繋がらなくなっちゃって」

ミミは申し訳なさそうに夢子に視線を向ける。
そう言えば、社長が言っていた。理由は分からないが、奏カナは三年前第一線を退いたと。

「夢ちゃんを探しながら、一年目は母にビッタリついて必死に学び、二年目はそれを自分流にアレンジし、三年目で奏カナブランドとは違うミズ・ミミブランドを立ち上げたの。女装して」

「そこが分からないんだけど、どうして女装する必要があったの?」

ミミは悪戯っぽく笑う。

「ミズ・ミミは力試しなの、母の命で。これが成功したら奏カナブランドを継げるの。だから、別人となる必要があったわけ。あっ、でもリーズナブルなアクセサリー部門でミズ・ミミの名は残していくつもりよ」

「ということは奏カナの後継ぎとなったら男性に戻るって訳?」

「ええ、そうなると思うけど、私、女性とか男性とか区別していないのよね。皆同じ人間でしょう」

この人何だか神みたいな人だな。ああ、だから夢子と愛を育めるんだ。
不思議の国の人を見るようにミミを見つめる。

ミズ・ミミは優しい眼差しを夢子に向ける。

「ごめんね、夢ちゃん。ズット独りぼっちにさせて。ズット会いたかった」

夢子の瞳からポロポロ涙が零れ落ちる。

「千草……」

そしてこの後は、熱き抱擁が続くのかと思っていたら……。

バチーン!

夢子が強烈なビンタをミミの頬に食らわせた。

「ワッ!」「キャッ!」「ウソッ!」

私、梨子、要子は呆気に取られる。

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