痛快! 病ンデレラの逆襲

「そう思うのは当然よね。私だって、ビックリだったもの」

ミミ曰く、榊原氏の依頼が最後の作品となる筈だったらしい。だが、それから少しして、扇氏から紹介を受けた、と社長が直接奏カナを訪ねて来たと言う。

「初めはけんもほろろだったのよ。でも……誰だったかしら、その名前が出た途端、態度が一変して」

ミミが人差し指を顎に置き、天井を仰ぎウーンと考える。

「あっ、そうそう。如月、そう如月千代さん、彼女の名前を聞いた途端、彼を家に入れたの」

お千代さん? 何故、社長の口からお千代さんの名前が出るのだろう。

「後で聞いたら、母と如月千代っていう人は幼馴染だったみたい。涙ぐんでいたわ」

社長はそのことを知っていたの?

「あの、それ、殿宮社長のことをおっしゃっているんですよね」

「ええ、そうよ。その指輪は母の最期のデザイン、って言っても母はピンピンしているけど」

クスッと笑って、指輪をひと撫でする。

「私をしごいているうちに、凄く元気になっちゃって。夢ちゃんと会うのを楽しみにしているの」

夢子の頬に頬を当てスリスリしながら、「明日、一緒に来てね」と言う。

「バカ、突然過ぎる! 今度のお休みまで待って」

夢子はぶっきら棒に答えるが、その口元はかなり上がっている。

「よかったわね。幸せになりなさい」

梨子が微笑む。

「人のことより、梨子ちゃんもね」

夢子が綺麗なウインクをする。

「そうよ。逃げていないでちゃんと彼と向き合いなさい」

要子が「さあ、帰るわよ」と立ち上がる。

「ミミさん、奏カナさんにお伝えください。この指輪とっても素敵です。一生大切にしますと」

丁寧に頭を下げ、皆と一緒に夢子の部屋を出て、自分の部屋に向かう。

< 98 / 165 >

この作品をシェア

pagetop