痛快! 病ンデレラの逆襲
「そう思うのは当然よね。私だって、ビックリだったもの」
ミミ曰く、榊原氏の依頼が最後の作品となる筈だったらしい。だが、それから少しして、扇氏から紹介を受けた、と社長が直接奏カナを訪ねて来たと言う。
「初めはけんもほろろだったのよ。でも……誰だったかしら、その名前が出た途端、態度が一変して」
ミミが人差し指を顎に置き、天井を仰ぎウーンと考える。
「あっ、そうそう。如月、そう如月千代さん、彼女の名前を聞いた途端、彼を家に入れたの」
お千代さん? 何故、社長の口からお千代さんの名前が出るのだろう。
「後で聞いたら、母と如月千代っていう人は幼馴染だったみたい。涙ぐんでいたわ」
社長はそのことを知っていたの?
「あの、それ、殿宮社長のことをおっしゃっているんですよね」
「ええ、そうよ。その指輪は母の最期のデザイン、って言っても母はピンピンしているけど」
クスッと笑って、指輪をひと撫でする。
「私をしごいているうちに、凄く元気になっちゃって。夢ちゃんと会うのを楽しみにしているの」
夢子の頬に頬を当てスリスリしながら、「明日、一緒に来てね」と言う。
「バカ、突然過ぎる! 今度のお休みまで待って」
夢子はぶっきら棒に答えるが、その口元はかなり上がっている。
「よかったわね。幸せになりなさい」
梨子が微笑む。
「人のことより、梨子ちゃんもね」
夢子が綺麗なウインクをする。
「そうよ。逃げていないでちゃんと彼と向き合いなさい」
要子が「さあ、帰るわよ」と立ち上がる。
「ミミさん、奏カナさんにお伝えください。この指輪とっても素敵です。一生大切にしますと」
丁寧に頭を下げ、皆と一緒に夢子の部屋を出て、自分の部屋に向かう。