痛快! 病ンデレラの逆襲

ドアを開けるがお千代さんは……やっぱり帰っていない。
奏カナの話と社長との関係を知りたかったのに……。

シンと静まり返った火の気のない寒い部屋。
こういう時、思い知らされる。私は独りぼっちだと。
胸が締め付けられ苦しい。なのに泣けない。

「お千代さん、早く帰って来て」

ノロノロと寝室に入り、目覚まし時計を見る。
時計の針は十時を指していた。
ウォーキングに出たのは午前六時半。随分長く夢子の部屋にいたものだ。

ブルッと震え、まずシャワーで汗を流し着替える。
今日は午後出だから、まだ時間は十分ある。

ちょっと気怠い。
少し横になろう、とまだ畳んでいなかった布団に潜り込む。

それにしても今日は冷える。毛布を体に巻き付けても全然温かくならない。
頭がズキズキする。瞳を閉じるとたちまち睡魔が襲ってくる。

深い眠りの中、久し振りにお千代さんに会った。
お千代さんは泣き虫だ。
瞳から零れる涙を拭いもせず、泣きながら左手の薬指を見つめる。

「お嬢様、本当にお綺麗ですね。お千代は嬉しゅうございます。やっと通じ合えたのですね、あの方と」

違うよ、この指輪は牛だよ。
今度、社長と夜景を見に行くんだよ。その時超高級牛食べるんだよ。
早く行きたいな……社長と……。

そう言う私をお千代さんは微笑みながら見つめていた。

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