追い詰められた...かぐや姫
私の愛おしい綺麗な姫は呟いた

「私を...て」


けれどそれは風に消えて
私の耳に届くことはなく彼女の言葉は意味を持つことはなかった。



先程彼女が自身のその細い首筋を切った忌まわしいナイフは”跡形もなく消え”

彼女に付いてしまった穢らわしい”怪我も消え”



馬車に轢かれる前の彼女に戻った。
彼女の母親は亡くなるほどの怪我を負ったにも関わらず


─彼女は傷一つなかった。


従者は気味悪がり彼女を殺しにかかった。

きっと彼は得体の知れない恐怖に耐えられなかったのだろう。


・・・が、彼女を殺そうとしたモノさえも消える。


彼女は耐えきれず泣き崩れる。


彼女は神に本当の意味で守られた『姫』であった。
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