鬼麟
途端に大きく開かれる目。

そりゃそうだ。こんな自己紹介なんて、最早自己紹介と呼べないだろう。単に喧嘩を売っているともとれるその発言に、驚かないほうが無理である。

自身の発言に対し、内心そう呟きつつも、覆すことなど何も無い。

「はい、じゃあ篠原さんの席は、」

呆けた表情が多々見られるその空気を拭うように、緩い声が響き渡る。

空いてる席を探す先生に、一人の生徒がわざわざ手を挙げて存在を主張する。

「ミカゲン、ミカゲン! ここ! ここ空いてる!」

その人の指す席は、その人の後ろの席で窓際。ではなく、窓際から一つズレた席だった。

先生はその生徒の言葉に頷くと、じゃあそこで、と軽く言う。変な渾名のようなものを付けられているが、特に何も言うことはないらしい。

仕方なく先生に促され、その席へと着く。

すると先生はホームルームは以上と告げ、私に一度目配せをしてから教室を後にした。

ここで女子を一人残すとは、案外放任主義なのだろうか。別に私としてはどうでもいいのだが、これがもし普通の女子であるならば心細いことこの上ない状況だ。
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