鬼麟
「ちょ、レオ。重い、重いよ! 縮んじゃうっ」

人はそんなに簡単に縮まないと思う。

蒼は本当に重たそうに肘を退けようとするが、そんな切実な言葉を意にも介さずに涼しい顔のまま。だが、泣きそうになる蒼に漸く緩慢な動きで退かすレオ。

漫才がしたいならば、別のところですればいいじゃないか。

「人の話、聞いてなかったの?」

苛立ちを隠すわけでもなく、露骨に前面に押し出しつつそう言うと、目を丸くした。

「え、俺たちのこと知らない?」

まるで知っていて当然だとでも言いたいのか、少し、いやかなり自意識過剰過ぎやしないだろうか。

知らない、と言外に含ませながら私は吐き捨てる。

「私は関わるなって言ったの。正直鬱陶しい」

馬鹿でも分かるように解りやすく、手っ取り早く寄るなと口にする。

けれど二人は全く響いてないらしく、けらけらと笑いながら目を見合わせている。

「僕こんなこと言われたの初めてかも」

「いねぇでしょ、ここらじゃ」

本当に、まったくもって不愉快でしかない。
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