鬼麟
あらぬ方向を見る私に、彼は容赦のない一言を浴びせる。そんなことはないと、精一杯見ようとするが、それでも目が泳いでしまう。

こんなことで気付きたくはなかったが、私は演技の才能がないらしい。これではおそらく演劇部には入れないだろうと、あるのかもわからない入る気のない部活を断念した。

「なるほどね〜」

何がなるほどなのか。

レオは納得したように呟く。

「棗ちゃん、演技はいいからさ〜」

「演技じゃない!」

「うん、そうだね。で、棗ちゃん」

思わず荒らげた声をサラリと受け流し、レオは微笑んだままだ。反論もまた聞き入れる気がないらしい。

「一緒に来てもらいたいところがあるんだ「いや!!」

咄嗟に出たのは拒絶の言葉だ。

ギャルであれば、こんな美形に誘われてしまえばほいほい行ってしまうはずなのに、またしても失態をおかす。私の中のギャル像がひび割れ、無残にも崩れ落ちていく。

そんな私をまるで罠にかかったとでも言いたげに口角を上げるレオ。
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