鬼麟
ここで授業があるというのは理由にならない。定期的に行われるテストを受け、赤点を回避さえすれば授業など受ける必要はない。

尤も、このクラスに於いてその授業を受ける者は少ないのだとか。

であるならば、残された道は一つ。逃げるしかない。いわばそれは戦略的撤退であって、敗走というわけではない。

余計怪しまれる可能性は高いが、このままずるずる乗せられるのはあまりよろしくない。

余裕そうにしているレオの隙をつき、弾かれたように駆け出して教室を飛び出る。

背後から追いかけるのは蒼とレオの声。

「蒼!」

「はいよ、まっかせて」

チラリと肩越しに振り向くと、人々を押し退けて青い髪が揺れている。

とにかく人を掻き分け、というか向こうが避けていき、一本の道となっていく。もう一度振り向くと、足が速いのか見え隠れする蒼の姿。

こちらから見えているということは、蒼からしてみれば間違いなく捉えている。さらに私は女であり、その異質性により目立つだろう。そう、わかりやすいのだ。
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