鬼麟
手前の階段を一段飛ばしで駆け上がり、さらに蒼と引き離して廊下を走り抜ける。そして反対側の階段のその手前の教室へと飛び込む。

教室の、廊下からは死角になるだろう場所へと息を潜める。

次いで廊下に響く、蒼の足音と思しきものが過ぎ去って行く。

そこで、殺していた息を吐き出すと、強ばっていた四肢が緩んでいく。

今廊下に出たとして、いつ戻ってくるかわからない以上身動きが取れない。かといってここにずっといるわけにもいかず、どうしたものかと腕を組む。

と、そこで嫌な気配が項を刺す。勢いよく振り向けば、青い瞳が細められ、上がった口角はゲームオーバーを告げた。

「見ぃーつけた」

ホラーか貴様! と内心舌打ちをしつつ、すぐに逃げの体勢へと入る。しかし、それよりも早く伸びた手は私の腕を掴み、そのせいで崩れた体勢のままに引かれる。

頭を打つ、と衝撃に備えて目を反射的に閉じる。ろくに受け身も取れないのだから、さぞかし痛いだろう。

ゆっくりと、固く閉じていた瞼を持ち上げる。
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