鬼麟
第1章
1.新しい学校
私にとって、転校とは人生で初めての経験だった。
新しい世界に何か期待のような気持ちがあったわけではなく、淡々とした気持ちで受け入れている自身を俯瞰しながら、未だ馴染めていない足元を見る。以前の学校の時のままの上履きには名前などなく、かといって新品というわけでもなく汚れが目に入った。
見上げると、前を行く担任となる人の背中が視界に入る。逞しくもなく、華奢でもないその背中に、どこかで既視感を覚えたが恐らく気のせいだ。
空を見ようとして、今まで逸らしていた視線を窓へと向ける。
「割る生徒がいるんですよ」
こんな時代にも、と。
いつの間にか振り返っていた先生は、丁寧な口調とともに人の良さそうな笑みを浮かべて言った。
先生は若く、制服を着て混じってしまえばすぐにでも溶け込めそうだ。しかし、おっとりしているように見えて、どこか隙のないその雰囲気が違和感を覚えさせる。
面白い人だ。
新しい世界に何か期待のような気持ちがあったわけではなく、淡々とした気持ちで受け入れている自身を俯瞰しながら、未だ馴染めていない足元を見る。以前の学校の時のままの上履きには名前などなく、かといって新品というわけでもなく汚れが目に入った。
見上げると、前を行く担任となる人の背中が視界に入る。逞しくもなく、華奢でもないその背中に、どこかで既視感を覚えたが恐らく気のせいだ。
空を見ようとして、今まで逸らしていた視線を窓へと向ける。
「割る生徒がいるんですよ」
こんな時代にも、と。
いつの間にか振り返っていた先生は、丁寧な口調とともに人の良さそうな笑みを浮かべて言った。
先生は若く、制服を着て混じってしまえばすぐにでも溶け込めそうだ。しかし、おっとりしているように見えて、どこか隙のないその雰囲気が違和感を覚えさせる。
面白い人だ。