鬼麟
正直どうでもいいと言いそうになるのを呑み下し、その先を待つ。できることなら早く終わらせてしまいたい。

「驚いたりとか、特段何も無いんですね」

漏れ出た言葉は不満か、単なる驚きか。どちらにせよ、倖のその発言に何が嬉しいのか、顔を輝かせる蒼とレオ。

「そうなの! だから僕気に入ったの!」

「吃驚したよ〜。最初俺らが狼嵐って言ったら、で? だけで終わりだぜ?」

蒼とレオのその自慢話のようなそれに、またもや目を丸くする倖。

それ以上の感想を持ち得なかったのだから仕方ないことなのに、どうしてそんなにも喜ぶのか理解に及ばない、気に食わないと愚痴りたくなる。

そしてこっちに同意を求めるように視線を投げないで欲しい。その視線から逃れようとそっぽを向けばいくらか楽になる。

私を抜いたここの人達は、顔だけ豪華でなんだか余計場違いに思えてくる。

「棗ちゃん、棗ちゃんもお願い」

レオのお願いに応える義理などない。全身で拒否の意を示すが、袖を引く蒼がそれを許さなかった。
< 29 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop