鬼麟
幾らか薄暗い中に安堵の息を漏らし、躊躇いなく屋上と校舎をと区切る扉をくぐり抜ける。

不意に、背後を振り返った。特に何の意味もなく、ほんの少しの違和感に刺されて、扉の閉まり際に目を凝らす。

修人の口角が上がっていたのを見た気がした。





大きな音を立てて閉まる扉。それがまるで彼女の心の扉を表しているようで、否定と拒絶の意味を否応なしに理解させられる。

正直な話、心底驚いた。

今まで出会った女の子、少なくとも同世代の女の子に、あんなにもはっきりと拒絶されたのは初めてだったからだ。それはどうやら俺以外も同じようで、複雑な雰囲気がこの場を支配する。

だけど、彼女の言葉――“大嫌い”に違和感を覚えたのは果たして、何人いるだろうか。

俺には人の心の内が読める。なんて、そんなサイコじみた能力はないけれど、些細な違和感には気付いてしまったあたり、察しはいい方ではある。けれどそれを断定できるほどの彼女との繋がりはないので、あくまでそれは可能性に過ぎない。
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