鬼麟
先生は、ああ、と頷く。

「転校生、なんて滅多に見られるものじゃないですしね」

そういわれればそうかもしれない。

以前の学校であっても、転校生などいなかった。

疑問が納得に代わる中、先生は楽しそうに笑いながら振り返った。

「なんてったって、女の子ですしね」

女の子、そうか女の子か。

言われてみれば、今まで視界に入ってきた者達は、どう頑張って見ても女の子とは言い難い。

つまるところ、男の子しかいないのだ。

たまに見る女といえば教師くらいなもので、とはいえそれもおばさんの部類に入る頃合の方々だ。

そんなものか。

「はぁ、そうなんですか」

私が再度尋ねると、先生は歩調を緩めた。正直早歩きとなっていたこっちとしてはありがたい。

「そりゃ最初はいたんですよ。女の子も。でもほら、こういう場所ですから、結局みんな耐えられなくなってしまって」

「そう、ですか」

聞いておいて何だが、曖昧でぞんざいな返事を返す。

その耐えられなくなったという女の子の気持ちも、わからないわけでもない。
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