鬼麟
けれどそんな暇はなく、振り返り扉へと手をかける。外から見た自身の家は薄暗く、人気のなさがより一層寂しさを増している。
「行ってきます」
誰もいないはずなのに、“行ってらっしゃい”と返してくれることなどないのに、仄かな期待が胸を締め付ける。閉めた扉の先に、何があるわけでもないのに、鍵を締めるのに少しだけ勇気を必要とした。
エレベーターなんて待っていられなく、階段を駆け下りる。すると肩を揺らしたこのマンションのコンシェルジュ、上槻さんがいて申し訳なさが残る中、会釈すればその強面を僅かに緩ませて会釈してくれた。
彼は強面だが、根は優しく礼儀正しい。あの顔だからこそ近づき難い雰囲気を出してはいるものの、実態は接しやすい良い人なのだ。
そこでふと、急ぎ足だったのを緩めて普通の足並みへと戻す。そもそも不良校なのだから、こんなにも急ぐ必要はなかったのではと、今更そんな疑問に辿り着く。
それに遅刻なんて、あいつがいたせいで今までしたことなかったために、そこへ妙な好奇心が生まれる。一度くらいしても、もう怒る人はいないのだからと決めれば、もう急ぐ必要はない。
「行ってきます」
誰もいないはずなのに、“行ってらっしゃい”と返してくれることなどないのに、仄かな期待が胸を締め付ける。閉めた扉の先に、何があるわけでもないのに、鍵を締めるのに少しだけ勇気を必要とした。
エレベーターなんて待っていられなく、階段を駆け下りる。すると肩を揺らしたこのマンションのコンシェルジュ、上槻さんがいて申し訳なさが残る中、会釈すればその強面を僅かに緩ませて会釈してくれた。
彼は強面だが、根は優しく礼儀正しい。あの顔だからこそ近づき難い雰囲気を出してはいるものの、実態は接しやすい良い人なのだ。
そこでふと、急ぎ足だったのを緩めて普通の足並みへと戻す。そもそも不良校なのだから、こんなにも急ぐ必要はなかったのではと、今更そんな疑問に辿り着く。
それに遅刻なんて、あいつがいたせいで今までしたことなかったために、そこへ妙な好奇心が生まれる。一度くらいしても、もう怒る人はいないのだからと決めれば、もう急ぐ必要はない。