鬼麟
教室の前まで来ると、その煩さが増す。どうやら自習のようで先生が見当たらない。そこへ入ると思うと、どうしても気が引けてしまい中々開ける決心がつかない。

静かに手をかけ、一思いに開けると途端に静まり返る教室内。一斉に降りかかる視線は昨日と寸分違わない好奇の目。居心地の悪さにむず痒い気持ちになりながら自身の席へと着く。

私の一挙手一投足に目を見張っていた人達も、やがて思い出したように取り戻される喧騒。男ばかりの空間は五月蝿くて堪らない。そういえば、とことある事に思い出に浸りそうになるのを振り切ると、影が差していることに気付く。

何かと顔を上げる前にかけられる名前。

見上げた先にはカラフルな色彩の頭と、やたらめったらにつけられたピアスやらアクセサリーの類。如何にもなその不良は、このクラスの人ではないだろう。なんというか、見た目的に。

「篠原さんは、狼嵐の何?」

何とは、何だ。

「他人です」

昨日初めて会ったばかりの、と頭に付けてもいいくらいの。
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