鬼麟
できることであれば穏便に、なおかつ最小に留めなくては。

「あなたが心配することじゃないでしょ、それは。それにもう、あの人達と関わることはないから」

こちらとしてはこれも合わせて迷惑しか被っていないのだから、誰が好き好んで自分から近付きたがるものか。関わる気など毛頭ないという意思を知ってもらえば、もう文句も言うこともないだろうと踏んだ。

けれど相手にとってそれは煽りと捉えたようで、幾度目かの舌打ちを豪快にする。

「テメェ女のくせに生意気なんだよ」

“女のくせに”。

こんなにも安直な言葉はない。怒りよりも心を宥める呆れに、彼に対して思うのは可哀想だ。哀れみを込めた目で睨み、無言の睨み合いが生まれる。

先に堪えきれなくなったのは、やはり男の方だった。

「おいテメェ、」

被せるようにして開かれる扉。予期せぬ来訪者は蒼とレオだ。なんだ、休みじゃないのかと気分が下がるが、タイミング的には良過ぎる。

何故か相当怒っているらしい蒼が、場に似合わない冷えた声で問うた。

「ねぇ、何してんの?」
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