鬼麟
男達からしてみれば、それは死刑宣告も同義の問いかけ。口からは言葉になりきれてない音が漏れ出ているだけで、顔面は蒼白へと塗り替えられた。

蒼から滲み出る殺気に怯えていた。たった、滲み出ただけの殺気に怯えるクラスメイト達便乗して、私も震えている“フリ”をする。

蒼はゆっくりとした足取りで男へと近付き、必然として蒼の方が身長は低いので、見上げる形となって問い詰める。

「聞こえてる? 何してんのって訊いたんだけど」

再度問い掛けられた男。

「何も、……していません」

私への威勢の良さはどこへ行ってしまったのか。ひどく弱々しい震えた声で紡がれた言葉に、情けなさしか感じられない。

もしかして、もしかしなくとも蒼を恐れる男達。幹部たる蒼に問い詰められたなら、さぞかし生きた心地はしないだろう。先程得た情報から察するに、蒼はもちろんレオも幹部らしいので。

「その辺にしとけ、棗ちゃんも怖がってるだろ」

レオの制止に蒼は不服そうだが、それでも軽くなる空気に皆が安堵の表情を浮かべた。腰を抜かしそうな男もまた、良かったと呟いているくらいだ。
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