鬼麟
あまりにも滑稽に怯えていた男に、情けない思いながら視線を送る。すると向こうも睨んできて、泣きそうな顔のまま男達を連れて出ていった。

吠える前に、吠えられるほどの実力をつけてから来いよと、その背中に送り付けても、答えることはないのだ。

近寄るレオが大丈夫かと聞いてくるので、首を小さく縦に返せば、良かったと言う。良いことなんて何もないのに。

「なっちゃん大丈夫だった?」

蒼が机に顎を乗せ、大きな青い瞳でしたから覗き込む。それにどうしても重なって見えた子犬の姿に、ほんの僅かに可笑しいと思える。

ふっと、口元が綻ぶ。

目の前にいた蒼は、その途端すごい勢いでレオにしがみつく。服を引っ張る蒼の頭を、レオがすごい速さで連打し始めて、こちらが吃驚してしまう。

「レオ! なっちゃんが、なっちゃいだだだだだっ!!」

縮む、縮んじゃうと今度は抗議の声を上げる。
蒼の身長はレオからしてみれば叩きやすいのだろうか。だとしたら、あまり蒼と身長差のない私も彼に近付くと連打されるということか。それは嫌だなぁ。
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