鬼麟
言い訳ばかりを浮かべては、それにこじつけて。卑怯者な私はすべてから目を逸らす。いや、閉ざしたのだ。

「と、思うんですよ。客観的に見ては」

先生はそれまでの張り詰めていた雰囲気を緩める。

「でも“逃げ”が悪いなんて、思いませんよ。それが最良の手段である場合もありますし。まあ、何のことのない個人的な意見にしか留まりませんが。要は、誰かに頼ってみてはという提案をしたいのです」

“頼る”とは、この人の言っている意味を理解できない。私ができることは遠ざけることであり、ましてや渦中に放り込むことではない。それを、本質的にこの人は理解してそれを口にしているのか。

仮に、それを理解した上で言っているとしたら、なんて考えたくもない。

黒く、濃い黒へと染まっていく思考に、足先から沈んでいく。

「頼るなんて、しません。絶対に。私は一人じゃないと、駄目だから」

自身に言い聞かせるように呟き、先生を睨みつける。

何を知っているのかなんて知らない。それはもうどうでもいいことだ。
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