鬼麟
飛び出た廊下の風通しの良さに、私の鬱憤も晴れないだろうかと、無為な期待を寄せた。





肌から伝わる圧迫感に、頭から足の先まで何かに固定されたかのように動けなくなる。動けば殺られる。明確に言葉にされたわけでもないのに、脳がそう叫んではしきりに警鐘を鳴らしている。

常人でも、僕らでも容易には出せない圧倒的質量を持つ殺気に、僕らは――辛うじて動いた視線だけで追うと、どうやらレオも同じようだ――たちまち縫い止められてしまった。

クラスの大半もそこに縫い止められ、一切の行動を封じられる。最も、僕らのようにある程度そういったものに触れていないであろう彼らにとって、僕らでさえも動けないこれに対してどれくらいの圧力なのかは計り知れないが、酷なものであることはその表情から読み取れる。

もう一度戻した視線をなっちゃんへと向け、その表情に戸惑ってしまう。睨みをきかせたその瞳の奥は、どこか泣きそうに揺らいでいて、その存在が希薄なものになる。
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