鬼麟
しかし、その表情はほんの一瞬見せた幻かのように掻き消され、恐ろしく冷えた声音が薄い唇から発せられる。

「……確かにあなた達は人気者かもしれない。けれど、全ての人があなた達に好意を寄せるわけじゃないの。詮索ごっこなんて、鬱陶しいだけなの」

優しさなど微塵も捨てた言い分に対し、諭すような口調の中に懇願が垣間見えてしまう。冷えた瞳がゆっくりと瞬きをする。

諦めと、隔絶に歪む。

「私はあなた達が大嫌い」

その拒絶の言葉に呪詛でも込められているのか、呆然と殺気によってうまく動かない身体では、小さな背中でさえも追うことはおろか、引き止めることさえかなわない。

“大嫌い”、なんて女の子に言われるのはいつぶりか。達観した自分がその言葉に妙な感覚を覚える。レオもきっと同じことを考えている。それは見ずとも分かってしまうあたり、それほど言われ慣れていないのだ。

こんなのは偏見だとか、あるいは見下した考えなんて捉えられるかもしれない。けれど、正直に言ってしまえば、女の子なんてみんな、寄ってくるものだとばかり考えていた。
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