鬼麟
今までただそうであっただけだと言われると、それは反論の余地もないことなのだが、今まで見てきた女の子は、化粧を塗りたくり、媚びで自身を固めて、擦り寄ってくるのに少しでも構えば喜びつけ上がる。

なんて浅はかな、と軽蔑さえも時には覚えた。
だから、こんな風に否定と拒絶を持って僕らの手の中をすり抜けて行ってしまう子なんて、初めてだった。

そこでふと動かした右手の先が、ピクリと僅かに動いた。そこからは思い出したかのように全身が極度の緊張状態から解放され、自由になっていく。レオも同じタイミングで動き始め、目が合い思わず呟く。

「……僕さ、こんなの初めて」

レオもまた、それに強ばった表情で同意しつつも、そこにあるのは僕と同じ気持ちのようだ。

なんとも言えない気持ちが広がる中、あの子の瞳を思い出せば、それが段々と形を成していく。

「なんていうか、すごい驚き」

色々と。

思ったままを吐露してしまうのも、それ以上に言う言葉が見つからないからだ。

「僕、あの子のこと放っておけない」
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