鬼麟
身勝手な、余計なお世話とも言えるが、どうしても不安が拭えない。まだ会って間もない彼女に、僕らが果たしてどこまで踏み込んで行けるか、踏み込ませてくれるか。

聞くまでもないそれは、離れろと言っているのに、僕は敢えてそれを壊してでも彼女をどうにかしたいと思う。

曖昧な、具体案すらなく、彼女をよく知るわけでもないのに、よくそんなことを考えられるものだと、自分でさえも驚く。

紛れもない本音と、どうしようもない衝動に駆られて、心の隅が焼き切れそうだ。欲を言えば彼女に面と向かって言いたいとすら思うのだから。

「そうだな」

彼女の出て行った扉を見つめていたレオも、頷きながら肯定の意を示す。

やはりレオも感じたのだろうか、彼女の歪さを。

決意にも似たその思いに、僅かに生まれた罪悪感で心の中でそっと呟く。ごめん、と。

彼女は突き放すことを、関わらないことを望むのに、僕らはどうしても彼女のその揺らぎをどうにかしたいと、思ってしまったのだ。





ふわりと吹いた風が、パラパラと床に落ちた本のページを捲りあげる。
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