鬼麟
彼の細められた瞳が、私の罪を見透かしているように見えて、堪らず目を逸らす。

荒れた気持ちになるのも、あんなものを見たせいだ。ささくれ立つ気持ちには収まりどころがなく、泣きたくなるほどに苛々する。

「どうした」

その言葉にあるのは余計な詮索に基づく勘繰りなどではなく、純粋な心配と気遣いによるものだった。

嫌になる。赤が私を見つめ、私が赤を見つめる。鼻をつく死の香りは、夢から漏れ出た幻だ。そうと解っていても嫌悪が顔に現れ歪む。

黙ったまま立ち上がると、彼の手はいとも簡単に離れ、地に落ちる。その手の離れ方にまたチラつく映像。何度だって繰り返すのは、あの日の出来事だ。

頬が彼の手の熱を帯びたが、それもすぐに冷めてしまう。私が夢から覚めたように。

「……ごめんなさい」

一言だけ置き捨てた詫びは彼にちゃんと届いただろうか。寝不足のせいで回転率の悪い思考回路に檄を飛ばし、次の安息の地を探り出す。

けれど突然身体のバランスが崩れ、次いで背中に熱が伝わる。
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