鬼麟
正直、今すぐこの怒りをどこかで発散して、鎮めたいものなのだが、如何せん私は一般人だということになっている。事を荒立てるわけにもいかない。

勢い良く振り返り、警戒と驚きに染まる顔に思いっきり吐き捨てる。

「あなた達のこと嫌い、大嫌い、本当に心の底からどうしようもなく、憎いくらい! もう関わらないでっ」

もう何度目の“嫌い”、だろうか。

吐き出してもすっきりしないのは、何も罪悪感があるわけではないというのに、蒼とレオ、倖の表情が曇る。

そんな中、修人の無表情が低い声で問うた。

「逃げるのか」

なんでそんなことを言われなくちゃいけない。何も知らないくせに、何も解っていないくせに。昨日初めて会ったばかりの奴なんかに。

自身にしか聞こえない程度の溜息を吐き、キッと睨みつける。

「あなた達は族、私は一般人」

はっきりとした境界線を示すように言えば、彼等はそれがどうしたと言わんばかりの顔をするので頭が痛い。

どうやら彼等に嘘はバレていないようで、そこは安心する。それさえバレなければどうやら言い包めることが出来そうだ。
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