鬼麟
「ましてやあなた達はそれなりに名が通ってるんでしょ」

それに気取ることもなく、事実だと頷く修人。そこには慢心すらない。

「なら私みたいなのが近付けば、どうなるか想像できるでしょ」

今朝のように厄介事を持ち込まれても困るのだ。逆恨みなんてとんでもない。私は無関係なんだ、彼等との繋がりは一切ない。

繋がりなんて、あいつらだけでいい。そこには何人も入れる気はないのだから。

蒼とレオはとくにそれを目撃したのだ。気まずそうに目を逸らしている。

「俺が気に入ったんだ、手出しはさせない」

自身の耳を疑ってしまう。

ああ、なんてことだ。私はどこで選択肢を誤ったのか、一番避けるべきものの対象となってしまった。

「修人、凄い引いてますけど」

倖が私の表情を読み取り、含み笑いをしながら代弁する。引くというよりも、引きつってるという表現が正しいのだが、この際それは些細な問題に過ぎない。

「ねぇ、棗ちゃん。そんなに俺らのこと嫌いなの?」

「そりゃあもうこれでもかってくらい」

即答だった。
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