鬼麟
修人に一歩ずつ近寄ると、彼の金糸から赤い瞳が私を見上げる。なんて綺麗で、なんて穢い赤。

恨めしい、羨ましい。そんな戯れ言を弄ぶ。

「死ぬ覚悟も出来ないくせに、近寄らないで」

無知は罪だと思う。かつての私のように、ただひたむきに純粋に求めるのはあまりにも愚かだ。見ているこっちが目を背けたくなるくらいに。

謝る気なんてないくせに、白々しくもレオにはごめんね、とだけ落とす。私も結局は、倖のことをとやかく言えない、空っぽの謝罪で満たしなかったことにしようとする。

「馬鹿にする気はないけれど、これが私から見た事実なの。だからって気にしないで、悪いってわけじゃないから。これはただの感想に過ぎない、一方的な言葉だから」

これじゃあ謝罪にも弁解にもなっていない。

けれど口から出てしまった以上、取り消すには彼等の記憶を消すしかない。けれど私にそんな都合の良い能力なんてあるはずもなく、やはりこれはもう撤回の余地はないのだと受け入れる他ないのだ。

もう何も言うことなく私が教室を出ると、彼等を苦しめる圧迫感はなくなり解放される。
< 79 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop