鬼麟
微かな物音がしたが、それでも追ってくる気配はなく、一先ず心を落ち着ける。

四人の解放とともに、私もまた四人から解放された。

あんなにも綺麗な人達と同じ空間にいたら、きっと私は笑ってしまう。笑えないけれど、笑ってしまう。

なんて、自分でも自分を物騒だと思う。

けれど、これで確実に一線を引けた。私と、あの人達との間に。

明確で、透明で、不可視の大きな壁とともに。

私は汚れているから。罪を背負っているから。

それなのに、あんなのが近くにいたらと思うと恐ろしくて堪らない。もしも、私が忘れてしまったら。のうのうとした平和な世界へと足を踏み入れてしまったとしたら。

耐えられない、そんなのは許容できない。

きっと、自身の犯した罪の重さで潰れてしまう。

ふと蘇った先生の言葉に、思わず笑みが零れる。

“頼る”――私に赦されることのない、それは酷く残酷なものだ。何かを知ってこその言葉は、私が受け取れるはずもない、夢みたいな話。

何を知っていようが、私にとってはすべて同じこと。私は一人で充分だし、それはこれまでも、もちろんこれからだって変わらない。
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