鬼麟
「消えてよ、もう……」

少女の代わりに浮かぶ影に、うんざりだと力無く呟く。

気休めにもならないそれに、嘲笑う声がどこからともなく聞こえてくる。耳を塞いでもそれは直接響き、果ては大きくなる。

「ぅあっ……!?」

だが、突然身体が浮き上がったことによっていとも容易く掻き消えた声。遅れて漏れた声は、可愛げなんてない、間抜けな悲鳴だった。

「言い逃げは、良くないと思うよ」

私の身体を軽々と持ち上げ、先程とは打って変わって不敵に笑うのはレオだった。間近で見たせいで、銀色だと思っていた髪が、灰色だったことに驚くが、それはいたってどうでもいいことだ。

何よりも考えなくてはいけないのはこの状況であって、そんな髪色は今はどうだっていい。

「ちょ、降ろしてよっ」

「いいの? 暴れると見えちゃうけど」

肩に担がれているせいで、ちょっと足を上げるとスカートも上がり、中が見えてしまう。それを知った上でこの担ぎ方をしているなんて、とんだ確信犯だ。
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