鬼麟
ぷらぷらと、どうすることもできなくなり、結果的に大人しくなる。けれど、この状態を甘んじて受け入れておくわけにもいかず、堪らず抗議の声を上げる。

「待って、どこ行く気!?」

待ってくれそうもない彼は、今来た方向に引き返していく。揺れる中喋ると、危うく舌を噛みそうになり、背中を叩くがノーダメージだ。もちろん手加減してるからなのだが。

「さあて、ね。それより、棗ちゃん。男ってさ、割と単純なんだ」

「はあ? そんなことより降ろして、今すぐ降ろして。あなた達となんて関わりたくないの、いーやーなーの!」

何をやっても聞いてくれない彼はけらけらと、それはもう愉しそうに喉を鳴らす。そのまま西校舎に入れば、他の生徒達に奇異な目を向けられるがそれもお構い無し。

だって可笑しいだろう。けらけら笑う暴走族幹部が、片手に女を担いでいたら、それはもう二度見してしまうだろう。

「棗ちゃんは変わり者だね」

あなたに言われる筋合いはないと思う。

口に出そうになったが、それを敢えて呑み込み毒を吐く。
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