鬼麟
人の事をとやかく言えることもなく、私も私で好きにしているのだから、その時点で同罪だ。

蒼の話に耳を傾けつつ、視界に入るレオの席は空席だ。先程何かあったのか、教室から出て行ってしまった、授業中なのに。

「だからさ、お姫様になった方が護りやすいの。公式的になっちゃんがお姫様だよ〜って言っちゃえば、迂闊に手を出すこともないだろうし、一番危ないのは宙ぶらりんな今だから」

彼の言葉には一理ある。なんだかよく解んないけれど、仲が良いかもしれないと狙われるよりも、むしろ姫だと公言してしまった方が手は出しにくい。それに、私が彼等と親しそうに見えるからといって、狼嵐自体を動かせるかといえば否だ。

幹部の彼等と縁があったとしても、彼等の下につく者達とは何もないのだから、護る義理もない。

説得する蒼の大きな瞳に写る、自身の顔にどうしようもない嫌悪感が生まれ、やっぱり視線を落とす私に彼はなおも説得を試みる。けれどどうしたって私の答えは変わらないし、変えるつもりも毛頭ない。
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