この恋を、忘れるしかなかった。
わたしの胸は、どきりと音を立てていた。

「あ〜…、相談に乗ってもらってたりしたんだ。ね、リカちゃん先生?」
「え?あ、うん、そうなの!」
霧島くんにフォローしてもらって、本当ならホッとするところなのにーーもうわたしの中は、どきりと音を立てるだけでは済まされなかった。
初めてーーー"リカちゃん先生"って、呼ばれた…。
もちろんそれに気が付いたのはわたしだけだったのだけど。

「ふーん、それで最近帰るの早かったわけ?修羅場的な?」
「まぁ…そんな感じ」
甲斐くんの問いかけに、少しだけ歯切れの悪い霧島くんだった。
「……」
わたしを、避けてた訳じゃなかったんだ…。

あの田宮さんが相手じゃ、大変だっただろうな。
なんて他人事(ひとごと)みたいに思ってる場合じゃない。
"オレは、安藤先生のことが好きだから"
"オレは、本気だよ"
「……」
わたしも立派な当事者…だよね。

霧島くんの言葉が、声が…特別な形になって、響く。
それと同時に、何かがわたしを押し潰そうとしているのを感じていた。
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