この恋を、忘れるしかなかった。
◇◇◇


”先生のケータイ番号教えて?”

「…」
確かにそう書いてあったことを確認すると、わたしはスケッチブックをぱたんと閉じた。
迷ったのは、一瞬だった。
わたしはいつもの付箋にケータイ番号と”悪用厳禁(笑)”と書いて、少し緊張しながらスケッチブックに貼り付けた。

文化祭が終わって早1ヶ月、季節は紅葉を過ぎ、11月も終わろうとしていた。
スケッチブックのやりとりは相変わらず継続中で、初めは3枚だけだった絵も、少しずつその数を増やしていった。

霧島くんは、何でわたしにケータイ番号なんか聞いてきたんだろう…。
藤井くんや甲斐くんと、また何か企んでたりするのかな。
それとも何か…直接言えないような事でもあるのだろうか。
ーーーなんて事を考えていたわたしだったけど、次にスケッチブックが帰ってきた時に、考え過ぎだったことを知る。
”来月修学旅行あるから先生に写真とか送ろうと思って。悪用なんてしないし。LINE追加しとくね!”
「…」
修学旅行…そうなんだ。



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