この恋を、忘れるしかなかった。
「えーっ、その言い方失礼。誰でもいいなんて、美雪そんなこと言ってないし」
「オトコとっかえひっかえしてるの、どこの誰よ」
「そんなことしてないもん!今の彼氏だってもうすぐ1年……」
「はい、ストップ‼︎」
わたしは手をパンッと叩いて、2人の会話に割って入った。

恋多き美雪ちゃんと、それとは真逆で恋愛に対してクールな恵ちゃんじゃ、会話が平行線をたどるのは目に見えていて、誰かが止めなきゃ絶対に終わらない。

「みんなそれぞれ考え方が違って当たり前なんだから、それ以上言わないの」
「はぁい」
おとなしく引いた恵ちゃんに対して、
「だって〜…」
美雪ちゃんはまだ口を尖らせていた。

「それより恵ちゃん、ケーキなんかと比べたらお饅頭の方がよっぽどカロリー低いんだよ。和菓子ってダイエットにいいって聞いたことあるし」
「あ、美雪もそれ聞いたことあるー」
「ホント⁈」
恵ちゃんの表情が、雲の隙間から射す太陽の光みたいにパァっと明るくなった。


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