この恋を、忘れるしかなかった。
「リカちゃん先生?顔赤いよ?」
「…え?」
美雪ちゃんに指摘され、反射的に手のひらで頬に触れた。

なんで…。

「な、何でもないよ。さぁ、そろそろ職員室に戻ろうかな」
なんでーーー霧島くんの顔が…浮かんできたの……。
「じゃぁ美雪たちも帰ろっかな」
「またねリカちゃん先生」
「うん、気をつけてね。さようなら」
『さようならぁ〜』
美雪ちゃんと恵ちゃんのハモった声が、わたしを見送る。

わたしは……廊下を歩きながら、身体中がドクンと勝手に音を立てているのを抑える方法がないかと、そればかりだった。
「……」
霧島くんとは、スケッチブックのやりとりとメールをたまにするだけの関係。
メールだって、数える程しかしていない。
だいたい歳も離れすぎているし、それ以前に生徒だよ、そういう対象じゃないでしょ。

なのに、なんで……。


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