この恋を、忘れるしかなかった。
良かった…わたしが嘘をついたことに、気が付いてなさそう。

「てか何で絵の内容知ってんの?」
「……!」
ゔ……やっぱりバレてた⁈

「さっき、まだ見てないって言ってなかった?」
「そ、それは…ッ」
ニヤリとしながらわたしの顔を覗き込んできた霧島くんは、やんちゃな悪ガキみたいな顔をしていた。

「先生なら、すぐに見てくれたと思ってたんだよね」
「ど、どうして…?」
「オレの絵のこと、好きだって言ってくれたから」
ハッキリとした良く通る声でそう言った霧島くんを見たら、無邪気で優しい笑顔になっていた。

ボン!っと、身体の中で何かが弾けた音がしたーーー。

違う、大丈夫…好きだと言ったのは、霧島くんの絵の話であって……。
なんか、ダメだ、恥ずかしすぎて頭がまわらない。

「…くく……」
下を向いたわたしの頭上から、小さく笑う声が聞こえた。

「かわいいね、安藤先生って」

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