この恋を、忘れるしかなかった。
「やっぱり梨花子だー!やだー久しぶり〜!」
振り返ると、わたしの後ろに並んでいたのは亜子だった。

「ホント久しぶり〜。冬休みに会えなかったから超嬉しい!」
「学校の先生が”超”とか使う(笑)?」
「使う使う!ね、亜子は彼氏にチョコ買いにきたの?」
わたしは亜子の突っ込みをさらりと交わして、話題を変えた。

「うん、まぁね。後は会社の男性陣にも。毎年恒例行事的な感じで、チョコあげないといけないみたいな空気が、ね」
亜子は、面倒臭いなぁ〜って言いながらあくびをした。

「あはは。わたしも一応たくさん買って配るつもりだよ。でもここじゃなくて、もっと安いお店のチョコね(笑)」
「私も(笑)。高いチョコは彼氏と自分用」
ブランドチョコなんか高くて、たくさん買えるものじゃない、それはきっと亜子も同じ。

それでも、年に一度のバレンタインコーナーはたくさんの人で溢れていて、その手に握られた紙袋からはたくさんのチョコレートが覗いていた。

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