この恋を、忘れるしかなかった。
「あ、ねぇっ、亜子の彼氏の写真とかないの?」
「あるけど…」
「見せて?見たい見たい!」
亜子は自分から彼氏の話をしたがらない、だったらこちらから攻めるしかないじゃん?
急かすわたしに諦めたのか、亜子はカバンからケータイを取り出した。

「はい」
照れ隠しなのか、ぶっきらぼうにケータイの画面を見せてくる亜子が、何だかかわいかった。

「真面目そうな人だね!大人な雰囲気出てていいじゃん。優しそうだし」
「優しいは優しいけど、真面目かは…どうかな」
苦笑いを浮かべる亜子を不思議に思ったけど、やっと知れた亜子の彼氏情報にテンションが上がっていたわたしは、すぐにそれを頭の隅に追いやった。

「こんなに素敵な彼氏がいたら、バレンタイン楽しみだね〜。何歳の人?」
「えと…35歳、かな」
「若いじゃん、わたしの旦那なんて今年誕生日きたら39だよ。いいなぁ(笑)」
彼氏の話になるとやっぱり歯切れの悪くなる亜子は、そうかなと言って笑うだけだった。


< 70 / 123 >

この作品をシェア

pagetop