この恋を、忘れるしかなかった。
「そうだよー!あぁもう、亜子が羨ましい!いいよね恋愛ってさ、ドキドキしたりして楽しいよね。結婚しちゃうと冷めたもんよ(笑)?」


「…楽しいしことばかりじゃないけどね」
「え……亜子…?」
ふいにわたしから目をそらした亜子は、何かを考えているような顔をしていた。

「あ!ほら、梨花子次だよ次!やっとチョコ買えるよ〜」
「え⁈あ、うん」
亜子は並んでいる列の前方を指差して、さっきの顔とは違い、にっこりと笑っていた。

ケンカでも、してるのかな…。
それならそうと言ってくれればいいのに、本当に亜子は話したがらないから、勝手な想像だけが膨らむ。

わたしと亜子は、今度飲もうという話をして別れた。

わたしは、亜子がわざと話題を変えたような気がして、亜子と別れるまで彼氏の話を振ることはなかった。


そしてバレンタイン当日、わたしは川本先生と一緒に職員室でチョコレートを配ってまわり、放課後は美雪ちゃんと恵ちゃんとチョコレート交換をする約束をしていた。


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