この恋を、忘れるしかなかった。
わたしはそそくさと教室を後にした。

「…」
なんか、いいな…恋って。
廊下から見える薄暗い空を見ながら、わたしは思った。

ホワイトデーに、予期せぬことが起こるとも知らずにーーー。



「……」
3月14日、職員室で林先生が張り切ってホワイトデーのお返しを配っていることなんか、わたしはどうでも良かった。

いつものように机の上に置かれた霧島くんのスケッチブックと、その上に置かれた……小さな包み。
わたしは見覚えのないその小さな包みに、釘づけになった。

これは、霧島くんからのお返し…だよね?
わたしはその淡いエメラルドグリーン色をした包みを、そっとバッグの中に入れた。

ほんの少しの予感も一緒にーーー。







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